不動産の賃貸契約を結ぶときに借主が用意する書類
お金や物を貸し借りする時は、返済をめぐって後でトラブルになったりしないよう、書面で契約を取り交わすのが一般的です。不動産の賃貸契約を結ぶ時も、同じように契約書を作成し、貸主と借主がそれぞれ署名します。また、借主の側はそれに加えて自分が借り手にふさわしいことを証明するためのさまざまな書類を用意する必要があります。
不動産を貸すには相手のことをよく知る必要がある
不動産の賃貸契約を結ぶ際に必要な書類については、法律や条例などの中には明確な定めがありません。極論をいえば、書類を一切用意せずに契約を結ぶことも可能です。ただ、法令等に定めがないということは、当事者間の合意があれば書類が必要かどうかを自由に決められるということになります。
当然、貸主が「これこれの書類を用意してくれなければ物件を貸すことはできません」ということも自由です。したがって、契約を成立させるために借主側は貸主の求める書類を用意しなければならないこととなります。
では、具体的にどんなものが必要になるかというと、基本となるのは2種類です。1つは借主の身元を証明するもので、もう1つは経済力を証明するものです。この2種類が必要な理由は、賃貸借という契約形態に起因しています。
賃貸借とは、借主が貸主から動産や不動産を借り受け、一定期間利用する代わりに賃料を支払うことをいいます。つまり貸主は自分の所有物を他人に使わせることになるので、当然ながらその人の身元が確実であるかどうかは大きな関心事となります。加えて、継続的に賃料を支払えるだけの負担能力を持っているかどうかも重要です。
また、不動産の賃貸借はその契約期間が比較的長期にわたるのが一般的です。そのため、貸主と借主の関係を一定期間良好に保つには、借主の身元や経済力を事前に知っておくことは貸主にとってとても大切なことなのです。
借主と保証人の身元が確かかどうか
不動産の賃貸契約を結ぶ時、具体的にどんな書類が必要かは、それぞれの貸主の考え方によって異なります。ただ、おおむねどの貸主も共通して求める書類というものは、いくつか存在します。中央区はとくに不動産人気が高く、どちらかというと貸し手市場となりがちなため、求められる書類もかなり細かくなる傾向にあります。
まず、借主の身元を証明する目的で必要となるのは、身分証明書・住民票・印鑑証明書の3点です。このうち身分証明書は運転免許証やマイナンバーカードを提示すれば通常は充分ですが、市区町村が発行する身分証明書を求められることもあります。
一方、住民票は独身者であれば自分の分だけで問題ありませんが、家族で入居する場合は家族全員分の住民票が必要になります。結婚と同時に引っ越して同居する、などというケースも同様で、2人分の住民票がそれぞれ必要です。
最後の印鑑証明は、賃貸借契約書に押印するのと同じ印影のものが必要になります。印鑑登録をしていない場合は、事前に市区町村の窓口で手続きを済ませておくようにします。
なお、一般的な賃貸借契約では連帯保証人を選任することになっていますが、その場合は連帯保証人の身元を確認する書類も同様に求められます。あわせて保証人を引き受けることに対する承諾書の提出も求められますが、こちらは貸主または不動産仲介業者が書式を用意してくれるのが普通です。
月々の賃料をきちんと支払えるかどうか
続いて経済力を証明する書類ですが、これは職業などによってケースバイケースとなります。会社員の場合は前年の源泉徴収票を勤務先から発行してもらえばこれで足りますが、たとえば前年と現在の給与水準が大きく違う場合や、転職して間もない場合などは、直近の給与明細の写しなどが必要になることもあります。
自営業の場合は、直前の確定申告書の写しを求められるのが一般的です。ただし、市区町村が発行する課税証明書の提出を貸主から求められた時は、これに従います。
なお、中央区は全国屈指のビジネスタウンであるため、事業用の賃貸物件が非常に多いという特色があります。そのため、借主が個人でなく法人というケースも中央区では珍しくありません。住居物件であっても、法人が契約して社員を住まわせることがあります。このような場合は、その法人に関連した書類が必要となります。
法人契約の場合に具体的に必要なのは、個人が借りる場合に必要なものをそのまま法人に置き換える形になります。すなわち、身元を証明するために必要なのは法人の登記事項証明書及び代表者の印鑑証明、経済力を証明するために必要なのは確定申告書の写しまたは法人税の納税証明書です。
賃料水準が非常に高額な物件では、信用力を証明するために貸借対照表及び損益計算書の提出が求められるケースもあります。なお、連帯保証人については代表者の親族などが選任されることが多いので、取扱いは個人の場合と同じです。
不動産の賃貸契約を結ぶ時は、借主の身元及び経済力を証明する書類が必要になります。身分や職業、貸主の意向などによって具体的な内容は異なりますが、中央区は高級物件が多いエリアなので、かなり高水準の信用が求められます。